5周年記念8連続ミニ個展 vol.4芭蕉布展③
「私マニアックなものを作るのが好きで・・・」と言われて興味をそそられない人がいるでしょうか。
マニアックな芭蕉布って・・・芭蕉布ってだけで十分マニアックなのでは?????
興味津々で大城あやさんの工房を訪ねてみました。
これでーーーーす!と出してくれたのは、薄くてふわっとしながらも、張りがある布。
芭蕉布???と思っていると、一般的な芭蕉布をもちだしてくれました。比べてみると、その違いが際立ちます。
糸を撚らずに織られた、琉球王朝の王族の薄い羽織地の再現とのこと。
糸を撚らないってどういう意味ですか???
そういえば、糸って撚ってあるんですよね。あの糸車でくるくるやってるのはその工程です。
撚らないと、糸は切れやすく弱い。撚らないのは、薄く、軽やかな仕上がりにするためで、実用というより美しさを追究した作り方。だから王族の衣装なんですね。
あやさんは、素材の未知の可能性を感じるものに美しさを見出し、それを独自の方法で再現することに情熱を注いでいます。
芭蕉布工房で伝承生として3年学んだあと、県立芸大の助手をしながら大宜味村に工房を立ち上げますが、当初はだれもやってないことをやってみたいということ以外、なかなか方向性が定まらなかったそうです。
そんななか、「極上の芭蕉布を織ってみないか」という依頼が来て、やるやるやるーー!と喜び勇んで手を挙げます。ノウハウもなく、普通に考えると難儀な仕事ですが、だからこそやってみたいっ、と持ち前の負けん気が着火し、メラメラっと燃え上がったのでした。
この仕事をきっかけに、進むべき方向性がすーっと開けたのだそうです。
いわゆる伝統的な工芸品のやり方をそのままなぞるだけでなく、ひとつひとつの工程で新しいことを探究したい。マニアックな仕事を嬉々としてこなすスタイルの始まりです。
芭蕉という植物の特徴は、繊維にツヤがあること。そして、ひんやり、ふんわりしていること。これらの特徴を作品に落とし込めたときがいちばん嬉しいと言います。
そのためには、繊維の白さ、細さ、長さ、糸の撚り方などなどなどなど、さまざまな要素が絡み合って布の結果につながります。そしてこれらはすべて、芭蕉を育てるところからから始まるのだそうです。(なんとも気が遠くなる話です!!!)
あやさんの創作のキーワードは「復元」。博物館などにある、ノウハウが伝わっていない作品の復元に試行錯誤しながら取り組む過程で、狙っていたことにドンピシャに行きあたることがあるそうです。そのような経験を重ねるうちに、工芸品として注文を受けても自分のエッセンスを入れて独自性を出することもできるようになってきたとのこと。そして近々、完全に途絶えた奄美大島の芭蕉布のノウハウを求めて調査旅行を計画されています。
心が躍る方向に進んでいったら、機会が舞い込んでくるようになったそうで、訪ねたとき織り機にかかっていたのは麻でした。京都から、昔の糸を織ってくれる人を探しているけど地元では見つからなかった案件とのことで、それこそあやさんの真骨頂。とても楽しそうでした。
今回出品作品は少ないですが、あやさんのコーディネートなしには芭蕉布展の実現はありませんでした。
自分の作品作り以外のことも身軽にこなす行動力も半端ないです。
小さな身体の中に収まりきらないエネルギーが紡ぎだす糸芭蕉の世界の新しい可能性。目が離せません。
【大城あや / 芭蕉布工房うるく】
1978年 兵庫県神戸市生まれ
2001年 沖縄県立芸大卒業
「喜如嘉の芭蕉布伝承生」として芭蕉布制作を学ぶ
2004年 退所
沖縄県立芸大非常勤助手
2010年 工房うるく開設
2016年 沖縄県立芸大非常勤助手退勤
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